節入り時刻の基準について

 九星気学では節入りが年や月の区分の基準となっています。つまり年の始めは新暦の元旦ではなく立春です。また、月の切替も24節気の啓蟄、清明、立夏、芒種、小暑、立秋、白露、寒露、立冬、大雪、小寒の日に行われます。

 24節気は、天保14年末(1844年2月17日)まで使用されていた寛政暦では、1年間を時間で24等分する「平気法(恒気法ともいう)」を用いて定められていましたが、天保15年から新たに導入された天保暦では、太陽の位置を計算し、天球上の太陽の軌道(黄道)を24等分して、24等分された位置を太陽が通過する日を24節気としています。この方法を定気法と言います。

 地球が太陽の周りを公転する軌道は真円ではなく楕円です。冬至の頃は太陽に近づく近日点で、夏至の頃は遠日点になります。このため地球から見た太陽の黄道上の移動速度は、近日点ではやや速く、遠日点ではやや遅くなります。こうしたことから24節気の間隔は一定ではなくなり、定気法による節気の日時を算出するためには複雑な軌道計算を行う必要があります。
 四柱推命や九星気学における節入りの日時の考え方ですが、歴史の長い平気法によるべきか、より天体の実際の運行に則した定気法によるべきなのかは議論が分かれるところです。九星気学は既に定気法による暦が定着していた大正時代に集大成された占法ですので、定気法に拠るべきと考えるのが順当と思います。
 逆に中国古来の歴史的理論に沿う四柱推命では、定気法の運用が行われていなかった頃に成立していますので、定気法よりは平気法に拠るべきではないかと考えています。いずれにせよ、その占法が確立される過程では、様々な過去の事例と占いの結果を比較して理論が裏付けられることが繰り返されますので、時代背景が異なる判断基準を当て嵌めようとするのは、自ら理論的根拠を喪失させることになります。

 日本における公式な24節気の日時は、国立天文台(以前の東京天文台)が発表しており、官報に毎年掲載されています。1954年に1955年の24節気の内容(節入り日時)が公表されたのが始まりで、現在は2017年分までが公示されています。
 黄道上を太陽が通過した日時の結果を報告するのではなく、翌年分の予報値を発表するのですから、正確な計算を行うための根拠となる理論が必要です。国立天文台の暦計算室では天文学の進歩に応じて、計算の根拠となる手法を改善しています。
 米国のジェット推進研究所は、惑星探査のために太陽、月、惑星の軌道計算式とデータ(DE=Development Ephemeris)を発表していますが、国立天文台では昭和60年版からはDE200、平成15年版ではDE405を採用し、平成28年版からは、DE405をさらに高精度にしたDE430に切り替えています。

 当サイトでは、1955年から2017年までの間の節入りの日時は、国立天文台が公表しているデータを採用していますが、それ以外の期間の節入り日時の算出には、DE430を用いて計算を行っています。ただし計算モデルが微妙に国立天文台の計算方式とは異なっているようで、1955年から2017年の公表値と当方の計算結果を比較すると、最大で1分の誤差が生じています。遠い過去、遠い未来になるほど誤差は拡大する傾向にありますので、当サイトでの節入りの時刻は1955年から2017年以外の期間では最大2分程度の誤差を含んでいるものと思われます。当サイトの制作者の知識では軌道計算方式の改善までは手が届きませんので、なにとぞご了承願いたく存じます。

[余談] 当サイトの制作者がDE430による計算結果と国立天文台の公示データを比較していた時に気付いたことですが、1964年(昭和39年)9月の節入りは9月7日の24時0分と東京天文台(当時)は公示しています。
 九星気学では年月の境界は節気の日付としています。たとえば1964年の立秋は8月7日の21時16分と公示されているので、新暦の8月7日から8月となります。この場合例えば8月7日に生まれた人であれば、21時16分よりも前に生まれた場合でも月命星の計算では8月生まれとするのが一般的です。ですから1964年9月は節入りが24時であっても9月7日と考えることになります。
 ところが24時というのは社会通念的には9月8日0時と考える方が一般的です。また、節入り時刻の前後で月が分かれるとする流派もありますので、その場合には24時ちょうどに生まれた人でなければ9月7日生まれの人の誕生月は全員が8月ということになります。
 実はこの特異日については、CASIOの九星盤計算サイトで話題になっていたことがあります。結果的に現在ではCASIOのサイトでは1964年9月の節入りを9月8日に改訂しています。このためCASIOのサイトでは、1964年9月7日生まれの方の月家九星は八白土星となっていて、七赤金星に変わるのは翌日の9月8日からとなっています。ただしこれには異論もあって、CASIOのサイトでも7日のままで良いのではないかとの指摘もあります。ちなみに当サイトでは官報に掲載されて日本が国として公示している日付(9月7日)を採用していますので、1964年9月7日生まれの方の月命星は七赤金星となっています。


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